<概要>

 森林生態部には、森林科学の研究や教育の実践のために佐渡ステーションに演習林(499.2ha)、村松ステーションに苗畑(1.4ha)があり、利用調整等の業務は、五十嵐キャンパスの企画交流部事務が担当している。

 佐渡ステーションは佐渡市小田(旧相川町)に研究・宿泊施設を置き、大学の森林はこれより東5kmの大佐渡山地北部稜線沿い西側斜面に大部分が広がっている。演習林の最高地点は山毛欅ヶ平山(ぶながひらやま。947.1m)で近くに一等三角点が設置されている。林内の標高は270mから947mだが、大部分は標高600m以上である。周囲を海に囲まれた海洋島の山脈稜線上では上昇気流が発生しやすく海から供給される水蒸気量も多い。このため、一年の内6割から7割は標高600m以上の場所で日中に霧や雨となる雲霧帯の気象条件である。

 面積全体の8割以上を占める天然林には、スギ、ヒバ、アカマツ等の針葉樹の外、サワグルミ、ミズナラ、イタヤカエデ、カツラなどの落葉広葉樹が生育している。なかでも天然林資源の6割を占めるスギ天然林は、冬期北西季節風の影響による枝の片付きや雪圧による倒伏、伏条更新などが、日本海型天然スギ(裏スギ)の特徴をよく示し、まとまった群生は佐渡島内ではこの大学林のみである等、学術的にも極めて重要なものである。これら森林を利用して、森林科学にかかわる各種の学生実習と多様な研究、ならびに継続的な量水観測と気象観測、森林動態モニタリングなどを行っている。

 村松ステーションの苗畑では、佐渡の大学林で植林される苗木を育成するほか、育種用の採穂園、スギ精鋭樹の試験地、広葉樹の試験地などがあり、育苗関係の学生実習や実験、研究を行っている。近年は、雄性不稔性のスギ品種の選抜試験の研究も進めている。

 なお、森林生態部では、2002年より小佐渡地域において新潟大学地域貢献事業「トキ野生復帰プロジェクト」を進めており、小佐渡山中の放棄棚田・里山生態系を大規模に復元する作業を行っている。また、全国の大学演習林などフィールド系附属施設と共同して大規模長期生態研究(LTER)ネットワークを構築し、積極的なモニタリング研究を推進している。